映画『いぬやしき』公式サイト

PRODUCTION
NOTE

CGに芝居をさせる新技術
技術を駆使することで、
斬新な映像表現
が誕生した

企画の始まり

この映画の企画が立ち上がったのは2015年初頭。
佐藤信介監督と仕事をするチャンスをもらった梶本圭プロデューサーは、すぐさま「いぬやしき」の映画化を思いついた。『それ以前に原作を読んでいて、この世界観を映画にするのは、製作費もかかるし難しいと思いました。でも監督なら作れるかもしれないと、ダメ元でお願いしたら快諾いただいたんです』。監督もまた、原作をすでに読んでいたという。『日常から始まる家族の話で、そこにありえない要素が入ってくる、驚きのある物語ですよね。また主人公の犬屋敷だけでなく獅子神の背景も描かれた二軸構成になっていて、この二人がぶつかるところも面白いと思いました』。そこから脚本作りとキャスティングがスタートしたのである。

意外性のある
木梨憲武のキャスティング

主人公・犬屋敷壱郎役については、原作者・奥浩哉から“生粋の俳優ではなく、意外性と話題性を備えた人にしてほしい”という要望があった。そこから人選を始めた梶本プロデューサーは、TV「世にも奇妙な物語2015 傑作復活編」の「思い出を売る男」に主演した、木梨憲武の演技に注目した。『木梨さんにはもっと若いイメージがありましたが、これは老け込んでしまう役だったんです。それがリアルで犬屋敷にピッタリだと思いました。奥先生に提案したら、すぐにOKの返事が返って来たんです。たまたま先生も同じドラマを観ていて、僕とイメージが合致したんです』。監督は木梨の名前が挙がったとき、最初は年齢のこともあり、意外な感じがしたというが、ドラマでの演技の渋さに心を動かされた。だが木梨本人は、映画主演は2002年の市川準監督作「竜馬の妻とその夫と愛人」以来でもあり、すぐに出演OKとはいかなかった。『しかし家族で食卓を囲んでいた時に、この映画の主役の話が来ている事を木梨さんが伝えると、お子さんたちが原作のファンで“絶対やった方がいい”と言ってくれたんです。そんな後押しもあって原作を読んで、木梨さん自身も面白いと思って出演を決めてくれました。ですからご家族のおかげなんですよ』(梶本P談)。

ストイック
獅子神役に挑んだ佐藤健

大量殺人を行う、獅子神に扮したのは佐藤健。彼の最近の役を振り返ると、このダークな味わいのキャラクターは意表をついたキャスティングに思える。『獅子神はある人たちから見るとものすごい悪役ですけれど、別の人たちにとってはヒーローにも見える存在。佐藤健君はヒーローも演じてきましたが、TV「龍馬伝」の岡田以蔵役のように影のある役もやっていて、どちらの要素も演じられると思ったんです。ご本人は原作のファンで、こういう役をやってみたかったと仰って下さいました』(梶本P談)。監督も初めて組む佐藤健との仕事を楽しみにしていた。『健君は原作を読んでいたので、初めて会った時から獅子神をどう演じたらいいか、かなり明確な意志を持っていました。撮影前に本読みをした時は、すでに獅子神になりきっていましたね』。佐藤健は、別の映画を終え、続けざまに「いぬやしき」の撮影に入った。クランクインする少し前、CG加工用に彼の肉体をデジタルスキャンしたのだが、そこから彼は獅子神として完璧な肉体を作り込み、クランクイン前とは全く違う強靭な体を持って現場に入ってきた。そのストイックな肉体作りは、撮影終了まで続けられた。

CGが演技をする、
新技術への挑戦

近年ハリウッド映画では亡くなったスターや、スターの若い頃をCGで表現する“デジタルヒューマン”の技が使われているが、今回監督たちが挑戦した映像表現は、その進化系とも言える。『犬屋敷は全身が機械化されていて、デジタルヒューマンでないとやれなかったシーンがあるんです』(監督談)。俳優自身と遜色ないCG映像を作り上げるため、製作当時アメリカと台湾にしかなかったライトステージという人間のデータを360度から採取できる機材を使い、そのデータを取るため木梨を台湾に派遣。彼には劇中と同じく髪を白くし、首に皺を刻み込んだメイクをしてもらって、上半身をスキャンした。これによって肌の質感から髪の毛1本までがデータ化され、それを基にCGの犬屋敷(木梨)を作り上げていった。表情や動作などは撮影時、木梨にまずは演じてもらうが、それはあくまでリファレンス(参考素材)であって、俳優の演技をCGだけで表現したのは、日本の実写映画では過去に例がないという。その芝居がどこのシーンに使われているかを探すのも、完成した映画を観る楽しみの一つだろう。
 また犬屋敷と獅子神の体内からは様々な兵器が出てくるが、見た目は人間の彼らと無機質な機械を一体化させた生々しい表現は、ハリウッドで活躍する田島光二がコンセプトデザインを作り、監督が「GANTZ」二部作以来、同じVFXチームと培ってきた技術でさらに磨きをかけた。仕上げは「パシフィック・リム」の効果音を担当したScott Martin Gershinが独創的なメカの音響を加えてまったく新しいキャラクターとして確立した。最先端の技術と新たな才能とこれまで積み上げてきたノウハウを駆使することで、斬新な映像表現が誕生したのである。

リアルに再現された新宿の街

クライマックスは新宿の街で、犬屋敷と獅子神の空中戦が展開する。そのため実際の新宿の街を細部まで再現する必要があった。『新宿の街は完全にCGで作りました。まず僕のアイデアを入れた空中戦の絵コンテをアメリカ在住の韓国人Dwight Hwangが描いて、それを基にプレヴィズ(映像コンテ)を作る。これを基にCG映像を仕上げていくんですが、プレヴィズの映像だと、まるでゲーム画像のような感じになってしまうんです。それをもっと地に足が付いたものにするために、修正を加えてCG班とキャッチボール作業をしながらバランスを取りました。CGで作ると映像自体は綺麗ですごいけれども、リアリティがなくなる。それを現実の新宿に近づけていく加減が難しいんです。また飛んでいるスピード感でも、犬屋敷は自分の能力を思うように使いこなせないという設定ですから、ただスピードが速ければいいというわけではなく、超速で飛ぶ獅子神と飛び方に差を出したり、キャラクターに合った飛び方の表情をどこまで、出せるか、そこでセンスが試されるんです』(監督談)。実際の新宿ではなかなか見られない空からのアングルで、二人がどんな戦いを繰り広げるのか。そのリアルな街と映像も見どころだ。